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不適切保育を防止するには?ガイドラインやマニュアル活用など対策方法を解説

不適切保育を防止するには?ガイドラインやマニュアル活用など対策方法を解説
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近年、こども園、保育園、幼稚園での「不適切保育」の話題がメディアを騒がせています。

不適切保育が発生する原因には様々ありますが、自らの保育や周りの職員の保育に対して疑問を抱きつつ、人間関係の悪化を恐れて指摘できなかったり、日々の忙しさから放置してしまったり、職員自身が、自らの保育が不適切保育だと認識せずに行っている例も多いです。

不適切保育を防止するためには、職員1人1人の意識も重要ですが、園がその指針を示した上で、共通認識を持つことは非常に重要です。そのために重要となってくるのが、園内で利用するガイドラインやマニュアルです。

ガイドラインやマニュアルがないと、職員らは自らの行為が不適切保育に当たるか否かを自己判断しなければならなくなり、もっぱら本人の経験や能力に左右される事態になりかねません。また、ガイドラインやマニュアルを整備していない状況で不適切保育の問題が発生すれば、園は混乱に陥り、保護者からの信頼を失う事態となることは避けられません。

そこで、この記事では、不適切保育の防止の方策や、不適切保育防止に向けたガイドラインの利用、マニュアルの策定方法について解説します。

それでは、見ていきましょう。

 

【参考情報】保育園・幼稚園・こども園など幼保業界における弁護士の必要性や探し方、費用などについては、以下の記事で事例付きで詳しく解説していますので参考にしてください。

保育園・幼稚園・こども園の顧問弁護士!弁護士の必要性や費用の相場を解説

 

▶【関連情報】園の不適切保育研修にも活用していただける「不適切保育対応」に関する書籍のご紹介です

不適切保育のおすすめ本「幼保事業者の重大事故・不適切保育対応」

 

1.不適切保育の防止とは?

まずは、不適切保育を防止することの重要性について解説します。

 

1−1.そもそも、不適切保育とは?

不適切保育とは、「保育所での保育士等による子どもへの関わりについて、保育所保育指針に示す子どもの人権・人格の尊重の観点に照らし、改善を要すると判断される行為」(株式会社キャンサースキャン「不適切な保育の未然防止及び 発生時の対応についての手引き」)や「虐待等と疑われる事案」(こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」)のことを指します。

不適切保育の具体的な事例などについては、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。

 

▶参照:不適切保育の事例!幼保現場で発生する種類や具体例を徹底解説

 

株式会社キャンサースキャン「不適切な保育の未然防止及び 発生時の対応についての手引き」や、こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」は、以下をご参照ください。

 

▶参照1:株式会社キャンサースキャン「不適切な保育の未然防止及び 発生時の対応についての手引き」(pdf)

▶参照2:こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」(pdf)

 

 

1−2.不適切保育を防止するための対策とは?

不適切保育をするのは、職員個人であることから、「職員個人の問題であれば、園としては防ぎようがないんじゃ…」と思われる方もいるかもしれません。

しかしながら、不適切保育が発生する背景には、「2.不適切保育が発生するのはなぜ?」で解説するように、園内での慢性的な人手不足や、職員同士のコミュニケーション不足、教育体制の不整備などがあることも多く、園として対策できることはたくさんあります。このような対策を取らなかった結果、園内で不適切保育が発生してしまった場合には、園としての責任を逃れることはできません。

不適切保育に関するマニュアルの整備、運用は、不適切保育を防止するための対策の1つですが、園として行う不適切保育防止の対策の方針を定めるものでもあり、不適切保育防止対策の土台となるものです。

 

1−3.不適切保育を防止することの重要性

不適切保育は、子どもの人権・人格を傷つける、または、傷つける恐れの大きいものであり、一度発生してしまえば、子どもの今後の成長や人格形成に多大な影響を与えかねません。

そして、近年の報道の過熱ぶりから、一度不適切保育が発生し、それがマスコミに報道されれば、園としての評判の低下は避けられず、さらには行政からの監査を受けるなど、園運営に多大な影響が発生します。

そのため、不適切保育は、「発生させないこと」が非常に重要であり、そのための防止策の検討、策定は必須なのです。

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

 

不適切保育を事前に防止すべきであることは前提ですが、時には身に覚えのない内容で行政通報やマスコミへのリークがされ、園がその対応に忙殺されるというケースもあります。

 

これは、いわゆるカスタマーハラスメントの一環として、園の対応が気に入らない保護者が、虚偽の、かつ苛烈な不適切保育や虐待通報をするもので、これを受けて、突然行政の職員が運営中の園にやってくるということも珍しくありません。

 

近年の不適切保育の問題は、国民にとっても大きな関心事であり、行政としても、通報を蔑ろにできないため、何らの客観的証拠のない保護者からの訴えを一方的に受け入れ、園に対して「用務員や調理員を含めた全員のヒアリングを実施させてくれ」など、どう考えても行き過ぎた調査への協力を要求してくるのです。

 

もちろん、行政の立場として、通報を真剣に受け止めて対応することは重要であり、園としても、これに誠実に協力をすることで行政との信頼関係を構築することも意味のないことではありません。しかしながら、何の客観的証拠のない保護者からの一方的な申し入れに対して、当該保護者からの詳細の聞き取りや行政内部での検討をせずに、園に全ての負担を押し付けてくる態度は、決して受け入れられるものではありません。

 

弁護士法人かなめでは、数多くの不適切保育事案を取り扱い、中には、カスタマーハラスメントの一環で、理不尽な対応を余儀なくされているケースにも多く接しています。行政から「職員全員のヒアリングを実施する」と言われた園のサポートをした際には、行政担当者に対して、現場職員に与える負担をなるべく軽減する必要性があること、保育に支障が出ないよう配慮すべき必要があること、今回の保護者の訴えの内容を踏まえると全職員のヒアリングは明らかに必要な範囲を超える過剰な調査であることを主張し、ヒアリング対象者の数を全員から半数以下に減らす等、園の立場に立脚した対応をしました。

 

不適切保育の問題が発生した場合には、まずは弁護士法人かなめまで、ご相談ください。

 

 

2.不適切保育が発生するのはなぜ?

不適切保育が発生する背景には、もちろん職員個人の人間性の問題もありますが、園側の問題をはらんでいることが非常に多いです。

例えば、不適切保育が発生する原因には、職員個人の問題の他、以下のようなものがあります。

 

  • 人手不足
  • 職員間のコミュニケーション不足
  • 保育に対する知識の欠如

 

近年、保育園、幼稚園、こども園などは慢性的な人手不足を抱えており、人員基準を満たすギリギリの人数で園運営を行っていることもしばしばです。また、時間帯によっては、少ない職員で、多くの園児を見なければならないことも多いかもしれせん。その際、職員1人1人は熱心に保育に取り組んでいるものの、どうしても、園児から目を離す時間が長くなることもあります。

この時、職員間での連携が取れていれば、その時間をできる限り短くすることは可能かもしれませんが、園では様々な年齢層、経験値の職員が働いており、お互いが意識しなければコミュニケーションは希薄になってしまいます。

そうなれば、連携がうまく取れないことはもちろん、保育の中で悩んだことがあっても相談ができず、不適切な保育が常態化してしまう場合もあります。さらには、園内でのこういったコミュニケーション不足の他、教育不足などにより、自分の行動が不適切保育であることに気付かない場合すらあり得ます。

不適切保育を防止するためには、まずは不適切保育が園として取り組むべき問題であることを意識し、不適切保育が発生する原因分析をしっかり行うことが重要なのです。

 

【弁護士 畑山 浩俊のワンポイントアドバイス】

 

人手不足問題・職員間のコミュニケーション不足問題の背景の1つには、保育園の開園時間を世の中の就業の実態に合わせるべく、一日11時間(月平均275時間まで)を標準開所とする制度設計になっている(子ども・子育て支援法施行細則第6条1号ア)ことがあります。要するに、世の中の就業実態は、概ね1日8時間、週40時間の労働時間であるところ、通勤・休憩時間の時間も含めた時間を保育園等で子どもを預かれるようにしようと思うと、必然的に開所時間が一日11時間、土曜保育も含めると月平均275時間となるのです。

 

これは、この開所時間の保育士を確保しなければならないということを意味します。これでは、どうしても、パート職員でシフトを埋める構成にならざるを得なくなり、慢性的な人手不足と、職員同士のコミュニケーション不足に繋がってしまうのです。

 

日本中の園で、正職員は若手保育士、パート職員はベテラン保育士という「逆転現象」が起こっており、保育・教育に関する知見が潤沢になるベテラン保育士から若手保育士へ指導教育ができないという「現場の声」が上がっています。不適切保育の問題に真に向き合っていくためには、「標準開所時間の長さ」という課題にも立ち向かう必要があり、国の労働政策と合わせた議論が必要になると考えています。

 

 

3.不適切保育防止のガイドラインとは?

不適切保育の防止に取り組むにあたっては、こども家庭庁が発行する「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」やその他各自治体などが発行しているガイドラインを参考にすることが有益です。

以下では、こども家庭庁が発行するガイドラインと、その他各自治体で発行されているガイドラインを紹介します。

 

3−1.こども家庭庁が発行する「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」

こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」

こども家庭庁は、令和5年5月に、「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」を公開しています。

 

▶参照:こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」はこちらから(pdf)

 

 

このガイドラインは、

  •  不適切な保育や虐待等の考え方の明確化を行うとともに、
  •  保育所等における虐待等の防止及び発生時の対応に関して、保育所等や自治体にそれぞれ求められる事項等について、整理して示す

ものであり不適切保育の防止から発生時の対応までを整理したものとなります。

まず、こども家庭庁のガイドラインでは、園における虐待とは何かを示した上、虐待に当たり得る行為の例を挙げています。

 

▶参照:「保育所等における職員によるこどに対する虐待」

行為類型 具体例
身体的虐待 ・首を絞める、殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、熱湯をかける、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物を飲ませる、ご飯を押し込む、食事を与えない、戸外に閉め出す、縄などにより身体的に拘束するなどの外傷を生じさせるおそれのある行為及び意図的にこどもを病気にさせる行為

・打撲傷、あざ(内出血)、骨折、頭蓋内出血などの頭部外傷、内臓損傷、刺傷など外見的に明らかな傷害を生じさせる行為 など

性的虐待 ・下着のままで放置する

・必要の無い場面で裸や下着の状態にする

・こどもの性器を触るまたはこどもに性器を触らせる性的行為(教唆を含む)

・性器を見せる

・本人の前でわいせつな言葉を発する、又は会話する。性的な話を強要する(無理やり聞かせる、無理やり話させる)

・こどもへの性交、性的暴行、性的行為の強要・教唆を行う

・ポルノグラフィーの被写体などを強要する又はポルノグラフィーを見せる など

ネグレクト ・こどもの健康・安全への配慮を怠っているなど。例えば、体調を崩しているこどもに必要な看護等を行わない、こどもを故意に車の中に放置するなど

・こどもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)

・おむつを替えない、汚れている服を替えないなど長時間ひどく不潔なままにするなど

・泣き続けるこどもに長時間関わらず放置する

・視線を合わせ、声をかけ、抱き上げるなどのコミュニケーションをとらず保育を行う

・適切な食事を与えない

・別室などに閉じ込める、部屋の外に締め出す

・虐待等を行う他の保育士・保育教諭などの第三者、他のこどもによる身体的虐待や性的虐待、心理的虐待を放置する

・他の職員等がこどもに対し不適切な指導を行っている状況を放置する

・その他職務上の義務を著しく怠ること など

心理的虐待 ・ことばや態度による脅かし、脅迫を行うなど

・他のこどもとは著しく差別的な扱いをする

・こどもを無視したり、拒否的な態度を示したりするなど

・こどもの心を傷つけることを繰り返し言うなど(例えば、日常的にからかう、「バカ」「あほ」など侮蔑的なことを言う、こどもの失敗を執拗に責めるなど)

・こどもの自尊心を傷つけるような言動を行うなど(例えば、食べこぼしなどを嘲笑する、「どうしてこんなことができないの」などと言う、こどもの大切にしているものを乱暴に扱う、壊す、捨てるなど)

・他のこどもと接触させないなどの孤立的な扱いを行う

・感情のままに、大声で指示したり、叱責したりする など

・参照元:こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」5ページ引用

 

そして、不適切保育については、全国保育士会の「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト~「子どもを尊重する保育」のために~」(以下「保育士会チェックリスト」)が挙げている以下のような項目を指摘しつつ、「保育士会チェックリストの「『良くない』と考えられるかかわり」 の5つのカテゴリーの具体的なかかわりの中には、不適切な保育とまではいえないものも含まれており、当該カテゴリーと不適切な保育とを同じものとして解することは必ずしも適当ではない。」と説明した上、「虐待等と疑われる事案」を不適切保育であると捉えています。

 

  • (1)子ども一人ひとりの人格を尊重 しないかかわり
  • (2)物事を強要するようなかかわり・脅迫的な言葉がけ
  • (3)罰を与える・乱暴なかかわり
  • (4)一人ひとりの子どもの育ちや家庭 環境を考慮しないかかわり
  • (5)差別的なかかわり

 

▶参照:「虐待等」と「虐待等と疑われる事案(不適切な保育)」の概念図

「虐待等」と「虐待等と疑われる事案(不適切な保育)」の概念図

・参照元:こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び 発生時の対応等に関するガイドライン」8ページ引用

 

その上で、不適切保育の防止に向けた園の対応としては

 

  • (1)より良い保育に向けた日々の保育実践の振り返り等
  • (2)虐待等に該当するかどうかの確認
  • (3)市町村等への相談
  • (4)市町村等の指導等を踏まえた対応
  • (5)さらにより良い保育を目指す

 

といった手順が説明されており、具体的な方法として、チェックリストの活用の他、個々の振り返りや職員間のミーティング等における対話などが提案されています。

 

3−2.自治体が発行するガイドライン

自治体においては、ホームページ上でこども家庭庁のガイドラインを引用している場合も多いですが、例えば福井県永平寺町や三重県桑名市では、独自のガイドラインを策定しています。

 

(1)参考1:福井県永平寺町「不適切な保育防止のためのガイドライン」

福井県永平寺町「不適切な保育防止のためのガイドライン」

福井県永平寺町では、令和6年4月に「不適切な保育防止のためのガイドライン」を公開し、こども家庭庁のガイドラインよりも詳しい整理をしています。

 

▶参照:永平寺町「不適切な保育防止のためのガイドライン」(pdf)はこちら

 

 

(2)参考2:三重県桑名市「桑名市保育所等における 不適切な保育防止対応ガイドライン」

三重県桑名市「桑名市保育所等における 不適切な保育防止対応ガイドライン」

三重県桑名市では、令和5年11月に「桑名市保育所等における 不適切な保育防止対応ガイドライン」を公開し、全国保育士協会が公開する「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」などを盛り込んだ独自のガイドラインを策定しています。

 

▶参照:桑名市「桑名市保育所等における 不適切な保育防止対応ガイドライン」(pdf)はこちら

 

 

皆さんも、自分の園を管轄する自治体のホームページで、ガイドラインがあるか、確認してみましょう。

 

4.不適切保育を防止するためには?

不適切保育を防止するためには?

それでは、ここからは、具体的に不適切保育を防止する方法をみていきましょう。

 

4−1.不適切保育のガイドラインの策定

まず、園として不適切保育の防止に取り組んでいくためには、ガイドライン、すなわち、「指針」を作ることが重要です。

園として、どのような意識で、不適切保育の防止に取り組んでいくかを示すことは、園の職員に対しても、園を利用される園児の保護者の方に対しても非常に重要なことです。もちろん、指針があっても、実際の行動に移さなければ何の意味もありませんが、園の経営者、管理職、その他職員が一丸となって不適切保育の問題に取り組むことを始めに意識づけすることで、それ以後のマニュアル策定や研修、チェックリストを利用しての日々の取り組みが、円滑に進みますし、浸透しやすくなります。

ガイドラインについては、「3.不適切保育防止のガイドラインとは?」で解説した通り、こども家庭庁のガイドラインや、各自治体のガイドラインなどを参照しつつ、どんなに面倒に思えても、園の実情にあったオリジナルのものを作成してください。実情に合わない指針は、職員の誰もが見向きをしなくなりますし、「守らなければならない」という意識がなくなるからです。

 

4−2.不適切保育のマニュアルの策定

マニュアルは、指針であるガイドラインを踏まえ、より具体的な対応策を盛り込んでいくものです。

指針は、方針や理念を示すことに力点が置かれるため、ある程度抽象的な記載となりますが、マニュアルはより、各園の実態に応じたものとしなければ、定めただけで意味のないものとなってしまいます。

例えば、以下で説明するようなチェックリストを利用しての定期的な不適切保育の有無のセルフチェックや、職員間での研修、通報窓口の設置などについて定める他、日頃から職員同士が意識すべきことを整理してまとめておくことをお勧めします。流れとしては、ガイドラインをベースにしつつ、肉付けをしていくイメージで作成をしてみましょう。

 

4−3.不適切保育のチェックリストの利用

不適切な保育のチェックリストとは、保育の現場で働く職員の方が、保育を行う上で必要な「子どもを尊重する」ことや「子どもの人権擁護」についてあらためて意識を高め、自らの保育を振り返るために、不適切な保育を行っていないかを自己点検するために活用するものです。

チェックリストに関しては、全国保育士会が、「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト〜「子どもを尊重する保育」のために」を公開しており、この内容を参考にしながら、各園で独自のチェックリストを作り、実践することが重要です。

不適切保育のチェックリストについては、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶参照:不適切保育のチェックリスト!作成方法や具体的な活用方法の詳細解説

 

 

4−4.不適切保育の研修

園で勤務をされている皆さんは、それぞれ、保育、教育に対して、それぞれ理念を持ち、児童の健やかな成長や養育のために、日々の業務に取り組んでいらっしゃると思います。

「自分の言動は不適切保育に当たる」と明確に意識しながら、保育を提供している職員はいないでしょう。

そのため、定期的に不適切保育における研修を実施し、その中で、職員同士で知識や経験の共有をすることにより、不適切保育に関する正しく理解した上で、日々の保育を健全なものとしていくことができます。

不適切保育の研修については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

 

▶参照:不適切保育研修を実施するには?研修内容や事例、講師の探し方を解説

 

 

また、弁護士法人かなめの幼保特化の弁護士による不適切保育テーマに関する研修サービスも参考にご覧ください。

 

▶参照:幼稚園・保育園・認定こども園など幼保特化型弁護士に研修を依頼できる「かなめ研修講師サービス」はこちら

 

 

4−5.日頃からの職員間のコミュニケーション

不適切保育を防止するために最も重要なことは、園で働く職員間でコミュニケーションを密にとることです。

2.不適切保育が発生するのはなぜ?」でも説明した通り、不適切保育が発生する原因の中には、職員間でのコミュニケーション不足があります。

どの園でも、人員に余剰があることは少なく、その中で、必死で現場をやりくりしています。誰がどの範囲の園児を見るのか、何かハプニングが発生した際に、誰がサポートに入るのか、非常勤の職員が帰った後、一時的に職員が少なくなる時間をどうやりくりするかなど、現場での職員間のコミュニケーションは安全な保育の肝です。

そのため、このコミュニケーションがうまくいかないことは、不適切保育はもちろん、事故の原因ともなり得るのです。

さらに、職員間で円滑なコミュニケーションが取れていないと、一人一人の職員が悩みを打ち明けられず、「この保育の方法でいいのかな?」と思っても、漫然と日々の忙しさから放置され、それが不適切保育として指摘されることもあり得ます。

不適切保育を防止するという指針の下で、定期的なミーティング等を通じて、職員一人一人がコミュニケーションの重要性を意識していくことが重要なのです。

 

4−6.通報窓口の設置

実際の保育の現場で、他の職員の保育を見ていて、「これって不適切保育では?」と疑問を抱くことがあるかもしれません。しかしながら、例え疑問に思ったとしても、その疑問をどのように園に伝えるべきかに悩んだ結果、日々の忙しさの中でうやむやになり、次に問題となった時には、すでに行政からの調査が入った後、ということも珍しくありません。

このような悩みを軽減する方法は、不適切保育の窓口を設置することです。具体的には、不適切保育、または、不適切保育の疑いのある行動を発見した際の連絡窓口を設定し、いつでも相談ができる環境を整えておくことで、園として、早期に不適切保育の疑いのある行動を認知することができます。

窓口の設置方法は、園内部に担当者を置く方法の他、外部に窓口を置く方法もありますし、通報は匿名とするか否か、報告後のフローなどを具体的にかつ明確に定めておくことが重要です。

また、通報を匿名とするか否かに関わらず、通報者の保護対策も必須です。せっかく、勇気を持って通報してくれた通報者が、通報をしたことによって園内で嫌がらせを受けたり、職場での居心地が悪くなることは絶対にあってはなりません。調査等の過程で、通報者が誰であるかが知れることがないよう、細心の注意を払うよう心がけましょう。

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

 

この記事は、不適切保育を防止することに重きをおいていますが、どれだけ注意をしていても、事前の防止策は完璧ではありません。

 

人員不足の中から、やむを得ず発生してしまった不適切保育の事案もあれば、行為者が経験の長い職員で、若い職員の誰もが注意できない状況で発生してしまった不適切保育の事案もあります。

 

不適切保育の防止だけでなく、不適切保育が発生してしまった際にどう行動すべきかについても、しっかりマニュアルを作り、研修を実施し、備えておくことが重要なのです。

 

そこで、弁護士法人かなめでは、この度園の不適切保育研修にも活用していただける「不適切保育対応」に関する書籍を出版しました。こちらも、ぜひ手に取り、活用してください。

 

▶参照:不適切保育のおすすめ本「幼保事業者の重大事故・不適切保育対応」について詳しくはこちら

 

 

5.幼保現場での不適切保育の防止について弁護士法人かなめの弁護士に相談したい方はこちら

弁護士法人かなめの弁護士に相談したい方はこちら

弁護士法人かなめでは、幼保業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)不適切保育の防止研修の実施
  • (2)不適切保育のガイドライン、マニュアル、チェックリスト等の導入支援
  • (3)顧問弁護士サービス「かなめねっと」

 

5−1.不適切保育の防止研修の実施

園の職員は、保育に関する様々な研修を受けられていると思いますが、弁護士などの専門家から、実際に不適切保育が発生すると、園でどのようなことか起こるか、職員としてどのような行動をとらなければならないかについて、研修を受けることはほとんどないのではないかと思います。

しかしながら、災害等と同様、不適切保育はいつ発生するかがわからず、一度発生すれば、園の運営に大きな打撃を与える可能性があります。そして、不適切保育が発生した際に発生する様々な問題を事前に把握しておけば、不適切保育を防止することの重要性も深く理解ができます。

弁護士法人かなめでは、不適切保育の防止に関する研修はもちろん、不適切保育発生時、園にどのようなことが起こるのか、そして園がどのように行動すべきかについて、研修を実施しています。また、不適切保育を防止する観点から、事前に職員の方にチェックリストを利用してセルフチェックをして頂き、その結果に基づいて研修を行うなど、園のニーズに併せた研修も実施しています。

この研修を受けることで、園として、職員としてどのように行動すべきかを事前に把握することができ、実際に不適切保育が発生した場合に冷静に対応ができるようになります。

不適切保育に関する研修については、弁護士法人かなめの「かなめ研修講師サービス」の以下のページをご覧ください。

 

▶参照:幼稚園・保育園・認定こども園など幼保特化型弁護士に研修を依頼できる「かなめ研修講師サービス」はこちら

 

 

5−2.不適切保育のガイドライン、マニュアル、チェックリスト等の導入支援

不適切保育防止への対策を進めるにあたり、ガイドライン、マニュアル、チェックリストを策定すべきであると説明しましたが、一体どのように策定し、導入していけばいいのかについて、悩まれる園も多いのではないかと思います。

その結果、インターネット上で見つけた書式等を利用し、中身を吟味せずに導入をして、その結果運用ができない、というケースは後を断ちません。

弁護士法人かなめでは、不適切保育の防止のためのガイドライン、マニュアル、チェックリスト等の導入支援も行っています。

弁護士と共にガイドライン等の導入を行うことで、園の実情に即した内容となるだけでなく、その後の運用方法などの支援も受けることができ、より具体的な不適切保育の防止対策を取ることができます。

まずは、以下のお問い合わせフォームよりご相談ください。

 

「お問い合わせフォーム」はこちら

 

 

5−3.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、総合的な法的サービスを提供する、幼保業界に特化した顧問弁護士サービス「かなめねっと」を運営しています。

弁護士法人かなめでは、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

具体的には、弁護士と園の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。いつでもご相談いただける体制を構築しています。

法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応しています。直接弁護士に相談できることで、園内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶参照:幼保業界に特化した顧問弁護士サービス「かなめねっと」について

 

 

また以下の動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。

 

▶︎参考動画:【介護・保育事業の方、必見】チャットで弁護士と繋がろう!!介護保育事業の現場責任者がすぐに弁護士に相談できる「かなめねっと」の紹介動画

 

 

(1)顧問料

●顧問料:月額6万5000円(消費税別)から

※職員の方の人数、園の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

「お問い合わせフォーム」はこちら

 

 

6.まとめ

この記事では、不適切保育の防止策を、ガイドライン、マニュアルの策定をメインに紹介しました。

不適切保育の防止対策の出発点は、不適切保育の問題は、園全体の問題であると認識し、しっかり指針を立て、園内で共有することです。

また、不適切保育の防止対策と、不適切保育が発生した際の対策はセットです。弁護士法人かなめでは、不適切保育の防止と同じ程度に、不適切保育発生時の対応にしっかりスポットライトをあて、いわば「不適切保育の防災訓練」のような研修を実施しています。

不適切保育の研修の実施を検討している園の皆さんは、是非お問い合わせ下さい。日々のミーティングや研修を重ねながら、適正な園運営を目指していきましょう。

 

「弁護士法人かなめ」のお問い合わせ方法

モンスターペアレント対応、児童保護者との契約に関するトラブル、保育事故、債権回収、労働問題、感染症対応、不適切保育などの不祥事対応、行政対応 etc....幼保現場で起こる様々なトラブルや悩みについて、専門の弁護士チームへの法律相談は、下記から気軽にお問い合わせください。
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幼保特化型弁護士による「かなめ研修講師サービス」 幼保特化型弁護士による「かなめ研修講師サービス」

弁護士法人かなめが運営している社会福祉法人・協会団体・自治体向けの幼保特化型弁護士による研修講師サービス「かなめ研修講師サービス」です。顧問弁護士として、全国の幼保事業所の顧問サポートによる豊富な実績と経験から実践的な現場主義の研修を実現します。

社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「幼保業界のコンプライアンス教育の実施」「幼保業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。

主な研修テーマは、「モンスターペアレント対応研修」「各種ハラスメント研修」「不適切保育・不祥事対応に関する研修」「保育事故に伴うリスクマネジメント研修」「個人情報保護に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、幼保事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。

現在、研修講師をお探しの幼保事業者様や協会団体・自治体様は、「かなめ研修講師サービス」のWebサイトを是非ご覧ください。

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この記事を書いた弁護士

幼保業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
企業側の立場で幼保事業所の労務事件や保護者対応事件を担当した経験から、幼保事業所での現場の悩みにすぐに対応できる幼保事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、幼保業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「幼保事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。
幼保業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

中野 知美なかの ともみ

弁護士

出身大学:香川大学法学部法律学科卒業/大阪大学法科大学院修了(法務博士)。
幼保事業所からの相談を数多く受けてきた経験を活かし、一般的な法的知識を幼保現場に即した「使える」法的知識に落とし込み、わかりやすく説明することをモットーとしている。保育事故、カスタマーハラスメント、労働問題、行政対応など、幼保現場で発生する多様な問題に精通している。

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出版書籍

不適切保育おすすめ本「幼保事業者の重大事故・不適切保育対応」

幼保事業者の
重大事故・不敵保育対応

著者:弁護士法人かなめ
・代表弁護士 畑山 浩俊
・副代表弁護士 米澤 晃
・弁護士 中野 知美
・弁護士 南川 克博
発行元:中央経済社


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